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【前編】ブラックなアニメ業界で生きていく理由。平成から令和における業界の変化

秋葉原街並

“アニメ制作会社”といったキーワードでWEB検索してみると「アニメ制作会社 やめとけ」「アニメ制作会社 ブラック」など……ずいぶんと、明るくない話題がヒットします。

労働環境が問題視されているアニメ制作の業界ですが、なぜ環境の改善が進まないのでしょうか。そのような中でもなぜ、アニメ業界で生きていく人々がいるのでしょうか。

まずは【前編】にて、平成から令和におけるアニメ業界の変化とともに、労働環境における問題点を包み隠さずお伝えしていきます。

そして【後編】では、労働環境問題を抱えている業界なのにも関わらず「なぜアニメ業界で生きていくのか」。アニメ制作会社として、これからどのように労働環境の問題点を改善すべきだと考えているのかについて、お話しさせてください。

【アニメ業界の変化】平成から令和における大きな変化はWEBの発展

アニメを視聴

アニメ業界において、平成から令和にかけて起こった大きな変化といえば、WEBの発展です。

テレビ放送からネットへと広がり、人の目に触れられる媒体が増え、視聴者は好きな時間に好きなアニメを見られるようになりました。

現在、ほぼすべての動画配信サービスで、アニメコンテンツを入れていると言っても過言ではないでしょう。ネット上ではCMが必要になるタイミングも増え、アニメーションでCMを制作するといった機会も増えています。

アニメの活躍の場が増えた・変わったという点が、平成から令和にかけてのアニメ業界で起きた大きな変化でした。

アニメ人気を測る基準は、リアルからWEBへ移行

アニメ活躍の場が変わったのに伴い、アニメの人気を測る基準も「リアルからWEBへ」と移行してきています。

アニメの2期をやるかどうかを判断する基準として「どれだけこのアニメで売り上げが立ったのか」といった話が重要です。そのため、今も昔も人気を測る必要があります。

ネットが普及する以前、アニメ人気の基準は「DVDやグッズなどの『物が売れるか』」が、主流でした。アニメ業界とは少し離れますが、漫画やコミック業界では「読者アンケート」などアナログな方法によって数値が可視化され、人気作品が見える化されていたと言えます。

ネットや動画配信サービスなどが普及した現在では「SNSでのインプレッション」「再生数やお気に入り件数」などにより、自動的に数値化して作品人気がわかるようになりました。

アニメの市場規模は拡大し、売上は増加している

秋葉原街並

ネットの普及などによりアニメを取りまく環境が変化し、アニメの市場規模は拡大し続けています。

景気や業界の動向を調査している株式会社帝国データバンクでは、毎年「『アニメ制作市場』動向調査」が行われます。2023年8月に発表された調査結果では、以下のポイントが記されていました。

  • 2022年はアニメ制作市場2,703億円(21年比+6.4%増 / 3年ぶりに前年比増)
  • アニメの視聴機会がテレビからネット配信へ軸足が移る
  • 日本アニメの動画配信、3社に1社が海外取引

(参考:株式会社帝国データバンク|「アニメ制作市場」動向調査(2023)

コロナ前となる、2011年の約1,500億円から2019年の約2,877億まで、制作業界の売上高は絶えず上がり続けました。

2020年・2021年はコロナの影響で一次下がったものの、2022年は2,703億円まで回復し、3年ぶりに前年に比べ全体の売上高は増加しています。2023年は、およそ3,000億円になる見込みとなっており、年々アニメ市場が拡大しているのは明らかです。

【労働環境の問題点】「アニメ制作会社への就職はやめとけ」と言われ続ける理由

モニターの前

アニメ制作会社への就職はやめとけ、という声を聞くことがあります。アニメ制作業界の売上高は上がってきていることから「業界として好調なのになぜ?」と思われるかもしれません。

「やめとけ」と言われる大きな理由は、以下の2つだと考えられます。

  • 「製作委員会方式」により、アニメ制作会社に十分な制作費が回ってこない
  • 「アニメ本数」が増加+求められるクオリティが向上し、人手が足りない

これらの理由について、詳しく解説します。

今も昔もアニメ制作は「製作委員会方式」が主流

商業アニメのほとんどは「製作委員会方式」によって制作が進められます。そもそもアニメを作るための財源は、企業や資本家などからの「出資金」でまかなわれています。製作委員会とは、出資した企業などの共同グループです。

出資する企業はさまざまですが、出資企業には「作品が成功した際に得られる収入に対し、出資割合に応じた分配金がある」ことや、以下のような権利などを得られることから出資を行います。

  • 遊技機メーカー:のちにパチンコなどで使用できる権利を得られる
  • テレビ局:テレビ放映権を得られる
  • 配信会社:配信権・独占配信権を得られる

また、アニメ制作会社への制作費も、出資金やアニメの収入からまかなわれます。しかし上記で解説した出資企業への分配金などに多くのお金が動き、アニメ制作会社への制作費にお金が回るケースは一部にとどまっています。

多くの制作会社がひとつの作品に関わっている

制作会社の中でも、製作委員会から直接制作費を得る「元請け制作会社」や、元請け制作会社から依頼を受け制作を行う「グロス請け制作会社」があります。

さらに、グロス請け制作会社から「背景や仕上げを担う制作会社」へと依頼が下りてくることになり、末端の制作会社になるほど報酬は下がる傾向です。大きく黒字化することが、非常に難しい構造となっています。

前述した「製作委員会方式」の現状の構造では、多くのアニメーション制作会社は十分な収益が見込めません。

労働に見合った報酬が支払われない場合や、人員不足で労働環境改善などの対策が難しいことから、一般企業などに比べ「ブラックな業界」だといわれ「アニメ制作会社はやめとけ」とされる原因になっています。

時代の多様化に伴い「アニメ本数」も増加している

アニメ市場規模の拡大・アニメ制作市場の売上高の増加の背景には、多様化によるアニメの本数増加という事実が隠されています。

日本動画協会の「アニメ産業レポート2022」によると、2000年は新規作品67本だったのに対し、2021年では214本です。2000年から2021年のあいだに、年間の新規アニメ作品の本数は3倍以上となりました。

以前よりも業界全体の売上高は増加し、一つひとつのアニメ制作会社の売り上げは伸びています。しかしその分、アニメを制作するうえでのスタッフ増員が必要です。

スタッフの増員には、当然のごとく人件費がかかります。売上高が増加しても人件費がかかり、単純に利益増にはなりません。

業界全体が好調なのに対し、労働環境・報酬関係の待遇改善は進まないままとなっている制作会社が多いのが、現状のアニメ制作業界です。

「アニメ業界は夢があるけれど……」で、終わらせないために

アニメの絵コンテ

明るい話題で締めくくれなかった「アニメ制作業界の実態」ですが、それでもアニメ制作の業界で働く人がいるのは、なぜなのでしょうか。

本記事の【後編】では、ブラックと言われる業界なのに「なぜこの業界で生きていくのか」といった内容から、労働環境についてどのような対策をしていくべきだと考えているのかをお伝えしていきます。

また、弊社の労働環境や、未経験者に対するフォロー体制についてなどもご紹介しますので、ぜひアニメ制作業界への就職活動などの参考にしてください。

アニメ制作業界に就職したい方が「アニメ業界は夢があるけれど……」で終わってしまわないよう、スタジオドットは情報発信を続けていきます。

studio. (スタジオドット)株式会社では、一緒に働くアニメ制作スタッフを募集しています!

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