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聖地巡礼の経済効果|アニメによる町おこしへの影響と成功事例

聖地巡礼

アニメファンによる聖地巡礼は、ときに大きな経済効果をもたらします。場合によっては数億円単位にものぼると言われ、今まで注目されていなかった観光地が活性化するといった事例もたくさん生まれました。

アニメの聖地巡礼による経済効果はどれほどのものなのか、観光誘致のための施策にはどのようなものがあるのかを解説します。

また、元々アニメの舞台になっていなかった地域が、地域自治体の発信から「聖地巡礼の地」として成功した事例もご紹介します。

アニメの「聖地巡礼」による経済効果が話題

聖地巡礼2

聖地巡礼「アニメの舞台となった地をめぐる」という、ファンの行動のことです。

2007年ごろ、人気アニメの影響でファンが作品の舞台になった土地に赴く行動が話題になったことが、聖地巡礼の文化が認知されたきっかけだと言われています。

アニメの舞台となった地域の観光客が増え、周りの商店や観光地が栄えるといった様子が見られたことから、昨今では聖地巡礼を地域活性化に活用したいと考える地域も多くなりました。

ひとつのアニメによる聖地巡礼で、ときには数十億円という経済効果をもたらすというデータもあるほどです。2016年には、流行語大賞にノミネートされるまでになりました。

聖地巡礼を促し観光誘致するといった動きは「アニメツーリズム(コンテンツツーリズム)」と呼ばれ、地方創生・町おこしの施策として注目を浴びています。

アニメの聖地巡礼による町おこし成功事例と経済効果

諏訪湖

アニメの聖地巡礼による町おこしの成功事例は、いくつもあります。中でも経済効果の高かったと考えられる作品や、作品の放映以降、長年に渡り観光誘致し続けられている作品をピックアップしました。

  • ・埼玉県久喜市|らき☆すた
  • ・岐阜県飛騨市|君の名は。
  • ・山梨県身延町|ゆるキャン△

これらの作品を基にどのような聖地巡礼やアニメツーリズムの動きがあったのか、その経済効果について解説します。

埼玉県久喜市|らき☆すた

聖地巡礼が大きく注目されるようになったきっかけともいわれるのが、埼玉県久喜市が舞台になっている「らき☆すた」です。

女子高生の日常を描くアニメの中で、埼玉県久喜市をはじめ埼玉県のさまざまな場所が舞台となりました。

特に経済効果が際立って目につくのが、久喜市にある鷲宮神社です。

主要キャラクターの姉妹が鷲宮神社の娘という設定であり、作中でも巫女服で神社にいる描写が多いこともあってか、アニメ放映以降は鷲宮神社に多くの参拝者が訪れています。

【参拝客の増加数】※2007年4月にアニメ放送開始

  • 2007年:9万人(放送開始前)
  • 2008年:30万人(放送開始以降)
  • 2010年:45万人
  • 2015年:47万人

らき☆すたによる経済効果は、放送から10年で30億円以上にもなったと言われ、実際に参拝客数の増加がイベントへの参加者のデータから、観光客の増加は明らかです。

参考:鷲宮におけるまちおこしの経緯|鷲宮・らき☆すた聖地10年史

岐阜県飛騨市|君の名は。

2016年の公開されたアニメーション映画「君の名は。」は、日本アニメとして世界歴代収入ランキングのトップとなった新海誠監督の映画です。岐阜県の飛騨高山と東京が舞台となっています。

ヒロインが住んでいたとされる岐阜県では、飛騨古川駅や飛騨市図書館・気多若宮神社など、実在する場所が多く使用されました。飛騨古川駅の北側からは、映画とまったく同じ風景が眺められます。

ある企業が市場調査サービスを用いて「君の名は。」を含む岐阜県が舞台の3つのアニメ映画作品の経済効果についてのアンケートを実施しました。

その結果、聖地巡礼による経済波及効果は、230億円にもなると言われています。

実際に「君の名は。」が公開された2016年の流行語大賞“聖地巡礼”がノミネートされたことからも、作品の経済効果は大きかったと考えられます。

参考:岐阜県ゆかりのアニメ映画3作品の聖地巡礼による経済波及効果

山梨県身延町|ゆるキャン△

「ゆるキャン△」は、山梨県の高校に通う女子高生が、野外活動サークル(通称:野クル / のくる)でキャンプに挑戦していく姿を描いたアニメです。

山梨県身延町を中心に、キャンプ場や道の駅・温泉など実在する場所が舞台となり、物語が進行していきます。

山梨にある大学と企業が2018年10~12月に協力しておこなった「ゆるキャン△地域に与えた影響調査」で、県内で2か月のあいだに発生した消費総額は8,000万円超だと推計されています。

最後に発表された劇場版ゆるキャン△は、2022年7月に公開されました。

終了後も勢いは衰えることを知らず、2023年5月にはゆるキャン△の世界や地域のグルメ・特産品などを楽しめるイベント、身延山久遠寺でゆるキャン△のキャラクターとコラボした交通安全祈願会も、引き続き開催されています。

地方企業から生まれたアニメ「やくならマグカップも」は地方創生として異例の存在

ろくろ

聖地巡礼というと、アニメが先にあり、そのアニメをうまく活用し聖地巡礼を促し、地方創生を目指すのが一般的なルートだと考えている方も多いでしょう。

地域が「話題のアニメに使用された土地」でなければいけないと思われがちです。

しかし、地元企業が自主制作していた漫画から聖地巡礼の地として成功した事例があります。岐阜県多治見市が舞台のアニメ「やくならマグカップも」です。

「やくならマグカップも」通称“やくも”は、地方の地元企業が自主制作していたフリーペーパーに連載していた漫画が基になり、2021年にアニメ化されました。

発刊した当初から、活用推進事業として「フリーコミックを利用して『街を元気にしよう』」という目的で取り組まれ、約10年でアニメとなっています。

【やくも|聖地巡礼にまつわる施策の数々】

ミュージアムを開設作品のこれまでの歴史にまつわる品々を集めたミュージアムを開設。執筆時点の2023年11月で記念イベントやワークショップを開催。
現地でしか見られない展示発刊されたフリーコミックやポスター・TVアニメ関連の映像や台本・ファンメイド作品の展示を行う。
オリジナルグッズの販売マグカップやポストカード・缶バッジを現地販売。

“異例”ともいえる発展を遂げた岐阜県多治見市の聖地巡礼事業は「現在、なんのアニメの舞台にもなっていない」という地域にとって、参考にすべき成功事例だといえるでしょう。

参考:多治見市|観光・産業|「やくならマグカップも」活用推進事業

聖地巡礼で観光誘致したいなら「聖地巡礼する人の気持ち」を知ることが大切

推し活

画面の向こうにみていた推しの世界(二次元)を、実際に自分が住んでいる世界(三次元)で感じられるところが、聖地巡礼に行きたくなる大きな理由だと考えられるでしょう。

SNSなどで「# 聖地巡礼」で調べると、アニメで登場したお店や食事・施設といった場所の写真などを投稿している人が多くいます。

いわゆる「推しキャラ」と同じ場所、同じ目線で同じものを食べ、二次元にいる推しキャラを三次元の空間で感じたいといった心情が垣間見られます。

また「物語にとても感動した、作品全体の雰囲気が好きだった」といった理由から、現実世界でも“同じ空気を感じたい”“あのときの気持ちの高揚を感じたい”といった方も少なくありません。

聖地巡礼を促すのには、作品やキャラに心を動かされることが大前提です。観光誘致を目指したいなら、近年の流行りだけでなく、いわゆる「オタク層に刺さるキャラデザインである」など、細かな設定をしていくことが大切です。

アニメーション制作で地域を「聖地」にする

聖地巡礼

地方創生をおこないたい地域が「アニメの舞台になっていない」場合には、聖地巡礼での観光誘致を諦めたほうが良いのかというと、そうではありません。

地域で話題になっているアニメがない場合でも、できることはあります。

事例として取り上げた「やくならマグカップも」は、地元の企業・団体が発信を始めたことにより、聖地巡礼の地として観光誘致に成功しました。

観光地として目玉になる場所は、山や海などの自然なのか、それとも温泉街やお店といった場所なのか?地域によって異なる強み観光誘致したい場所を明確にするところから始めるのがおすすめです。

地域の自治体や企業などを巻き込み、地方創世PR動画をアニメーションで制作し、SNSや地方の公式サイトで取り上げていくといった広め方を検討していけると良いでしょう。

さらに、イメージキャラクターやアニメーション制作、グッズ販売や声優・スマホゲームとのコラボ・音楽制作・スタンプラリーなど、聖地として訪れたくなるような施策も大切です。

アニメで地域をPRしたいとお考えの方は「スタジオドット」にご相談ください!

私たちstudio.(スタジオドット)株式会社は、システム開発やアニメーション制作を用いて「お客様のビジネス課題を解決する“新たな価値”を生み出す」がコンセプトの、クリエイティブ企業です。

これまで、国内のメジャーアニメやキャラクターデザイン・原画・国際スポーツ大会とのコラボレーション作品まで、さまざまなアニメーションを制作してきました。

さらに、お客様の課題を徹底的にヒアリングし「クリエイティブの企画制作」もおこなっています。地方創生PRアニメーションの作成と同時に、マーケティングのサポートもしているのが弊社の強みです。

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聖地巡礼から地方の活性化を、一緒に実現させていきましょう。

【構成 / 執筆担当】岩渕 ゆり(言ノ葉執筆屋)