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アニメ業界はブラックって本当?社員インタビューVol.1 中堅社員編
「アニメ業界を目指す若い世代に向けて、業界の良い部分も悪い部分も隠さずに発信したい」というコンセプトで社員インタビューを連載している本シリーズ。今回はオーロックス事業本部の中堅社員、制作担当のSさんのインタビュー記事をお届けします。Sさんは30代で他業界からアニメ業界に飛び込んだ経歴の持ち主。様々な業界を経験した立場から見たアニメ業界の特色や大変さ、そして働きがいについて聞きました。
・現在の業務内容について教えてください。
「制作担当として、スタッフィングやスケジュール制作を担当しています。もうひとつの役職が設定制作です。これは作品のプリプロダクションの段階で、キャラクターや背景美術の設定などを進行する仕事です。いずれも社内・社外の人材と連絡をとりながら、スケジュール通りに進行していく業務が主になります」
・アニメ業界に入る前の経歴について教えてください。
「元々アニメが好きで、背景美術の仕事に興味がありました。しかし紆余曲折あり、その後は飛行機の部品工場や某大手コーヒーショップなど、アニメとまったく関係ない業界で10年ほど働きました」
・改めてアニメ業界を志望したきっかけはなんですか。
「どうせ働くのなら、自分が面白いと感じられるものに携わりたいと思ったからです。まず『動仕会社』と呼ばれる類のアニメ制作会社を1社経験し、その後弊社に移りました」
TOPICS・動仕会社 アニメの原画仕上げ、原画と原画をつなぐ動画の制作、色を付ける彩色といった、いわゆる「動画仕上げ」を行う会社のこと。Sさんは元請の制作会社から入った動仕の発注を、海外のアニメ制作会社に手配する業務を担当していました。
常にプレッシャーと戦いながら、
先輩社員のアドバイスを糧に成長
・実際にアニメ業界で働かれる中で、大変な部分はありますか?
「制作担当の大変な点といえば『スケジュールに間に合わせなければいけない』というプレッシャーです。例えばフリーランスの外部アニメーターに発注する場合、中には締切までにカットを上げていただけない方もいらっしゃいますので、そういった時は焦りますね」
・締め切りまでに納品されない場合はどうするのですか?
「まずは電話をかけまくります(笑)あるプロジェクトではフリーランスのアニメーターに仕事を受けていただいた後、その方が音信不通になってしまったことがあって。あの時は大変でした……」
・業務の大変さが伝わってきます……。
「でも、弊社はアニメーターのお力を借りている立場ですから。無理のないスケジュールを組み立てられるよう、先輩に相談しながら業務を勉強していきました」
・先輩社員のサポートがある環境なんですね。
「社員同士の距離感の近さは弊社の特長だと思います。普通の会社は事業部長レベルの方と雑談するような機会は少ないと思いますが、弊社では役員の方とも気軽に会話できる環境です。喫煙所で役員の方におすすめの漫画を紹介することもあって(笑)でも、意外とそういった雑談が企画に活用されたりするんですよね」
毎日が学園祭?
アニメ業界で働く魅力と大変さ
・「アニメ業界は長時間労働」というイメージを持たれている方も多いと思います。
「例えば工場など、就業時間がきっちりと決められている働き方ってありますよね。そのような働き方は、アニメ業界では難しいと思います。逆に言えば就業時間が明確に決められていない分、馴れれば自分の時間を確保できるようになると思いますよ」
・ある種、フリーランスのような姿勢でしょうか?
「その感覚に近いですね。自分で自分の時間を管理することが大切です。『会社に何かしてもらおう』『とりあえずやることをやってお金がもらえればそれで良い』という考え方の方には、とてもおすすめできる業界ではありません」
・一方、昨今はワークライフバランスが重視されています。
「そうですね……。だから、そもそも働くということの価値観が違うんじゃないか?と感じる部分はあります。労働時間が短い会社で働かれている方から見れば、正直に言ってアニメ業界はブラックですよ。でも、無我夢中に取り組む中でしか生まれない熱量もあると思うんです。以前、某有名アニメ制作会社のプロデューサーが『アニメ業界は、毎日が学園祭のような雰囲気だ』と発言していました」
・学園祭、ですか?
「学園祭って、自分たちが目指すものに向かってがむしゃらに取り組みますよね。準備期間は遅くまで学校に残るのが許される、あの雰囲気ですよ。実際に残業は必要になりますし、繁忙期は昼夜問わず働かなくてはいけないケースもあります。そういった学園祭ノリが好きじゃないと、アニメ業界では働けないと思います」
「アニメーターは誰もがなれる職業ではない」
厳しい現実の中で、
ベテランアニメーターの姿が希望に
・アニメ業界にはどのような課題があると思いますか。
「うーん、まずは人件費が安い点でしょうか。その要因を辿ると、やはり製作費不足の問題に行き着くと思います。アニメ制作のコストは人件費が大部分を占めるので、もう少し製作費が出れば改善の余地があるのでは……という希望があります」
・アニメ業界の人件費は下がっているのでしょうか?
「下がっているというより、昔からあまり変わっていないんですよ。物価の上昇に追いついていないんです。先輩アニメーターから『昔は動画を1枚描けば、牛丼を1杯食べられた』といった話をよく聞きますが、今ではとても無理ですね」
・特に若手アニメーターの労働環境は、ニュースで取り上げられる機会が増えているように感じます。
「とはいえ若手アニメーターは技術職なので、一種の『修行』が必要なんですよね。プロ野球選手や俳優と同じで、技術がなければ声がかかりません。だから昔は必死に動画の枚数を稼いで食いつないで、技術が磨かれていったのだと思います。実際に上手いアニメーターはひっぱりだこなので、世間でイメージされている薄給の世界とは無縁です」
・技術とニーズのギャップは、技術職特有のジレンマですね。
「厳しい話ですが、アニメーターは誰もがなれる職業ではないと思います。ですが昨今はアニメの制作本数が多すぎて、技術が伴っていない若手アニメーターが最前線に駆り出されてしまうこともあるそうで……。だからこそこれからのアニメ制作会社は、きちんと若手を育てる姿勢が求められると思います」
仕事の一つひとつが思い出に
アニメ業界の魅力を伝えていきたい
・様々な課題がある中で、アニメ業界で働く面白さとは何ですか?
「自分は上手い人の絵を見ることが好きで。すごく上手なカットが上がってきた時はやっぱり嬉しいですね。後は、担当した回が完成した時の達成感でしょうか。実際に自宅のテレビで放映を確認して反省点をチェックしたり。そうやって、たくさんの思い出に残るところがやりがいだと思います」
・今までに一番、達成感を得た瞬間は何ですか?
「……まだないです。まだやりきってないという感覚が強いです。むしろ『この仕事はやりきったな』と心の底から思えることなんて無いと思いますよ。強いて言えばゼロから企画に関わって、自分の仕事にも満足できるような経験ができれば最高ですね。そんな仕事を目指していきたいと思います」
・最後に、読者に伝えたいことはありますか?
「世間ではアニメ業界で働いている人に対して『労働時間の長い、かわいそうな存在』というイメージがあるかもしれません。ですが、決してそんなわけではないと強く伝えたいです。その点はオーロックス事業本部で働いていても感じます。みんなそれぞれの理由があって働いているんですから。それに弊社はベテランの方も多く、技術がある方たちはかなり稼がれていますので(笑)」
studio.株式会社では、アニメ制作現場の労働環境改善に取り組んでいます。
依然として課題は多いものの、より安心して働くことのできる環境を実現するため、日々取り組みを続けて参ります。
studio.株式会社では、アニメ制作現場の労働環境改善に取り組んでいます。
依然として課題は多いものの、より安心して働くことのできる環境を実現するため、
日々取り組みを続けて参ります。