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アニメ業界はブラックって本当?社員インタビューVol.3 事業本部長編

日本のアニメがグローバルな人気を獲得する一方、課題になっているのがアニメ業界の労働環境です。アニメ業界に就職した若い世代が定着せず、人手不足がさらに制作現場を疲弊させてしまう……という悪循環が発生しています。
アニメ制作事業部「オーロックス事業本部」を展開する私たちstudio.(スタジオドット)株式会社にとっても、改善すべき問題のひとつです。
アニメ業界を目指す若い世代に向けて、業界の良い部分も悪い部分も隠さずに発信したい。その想いのもと本トピックスページでは、アニメ制作に携わる社員のインタビュー記事をシリーズでお届けします。
インタビュー記事の第一弾は、オーロックス事業本部 執行役員本部長の猪股です(ゼネラルプロデューサーの千葉も同席)。オーロックス事業本部の特色からアニメ業界の働き方まで、幅広いテーマでインタビューを行いました。

studio.株式会社 執行役員本部長

東芝EMI、ポリグラム、エイベックスなど、主にレコード会社でシリーズアニメのビデオパッケージ化や音楽制作、オリジナル作品の企画に携わる。遊技機メーカーの取締役を経て、GONZOに入社。その後CG制作会社の取締役を経て現職。 主な参加作品に「SAMURAI 7」「装甲騎兵ボトムズ」「魔法騎士レイアース」他多数。

ベテランと机を並べて技術を獲得
フラットな立場で高め合える環境が特長

・studio.株式会社についてよく知らない読者も多いと思うので、まずはオーロックス事業本部について教えてください。

「オーロックス事業本部はStudio.の一事業部ですが、いわゆる一般的なアニメーション制作会社と考えていただいて問題ありません。企画、アニメーター、制作進行など、アニメ制作に関わる職種が一通り所属しています」

・猪股さんの業務内容について教えてください。

「アニメを見ていると、CM前に『ご覧のスポンサーの提供でお送りしています』と企業クレジットが入ると思います。要は、そこに掲載されるスポンサーと交渉する仕事です。スポンサーから資金を集め、スタッフィングやスケジュールを手配します。アニメが家づくりだとしたら、建築家のようなものですね。完成に向けて設計図を書き、職人さんを集め、予算を割り振る役割を担います」

・アニメ製作の根幹を担う、重要な役割ですね。

「やや過激な表現をしてしまえば、スタッフィングと資金集めの段階で作品内容の80%が決まると言っても過言ではありません。制作体制を見据えてから動き始めないと、きちんとした作品を作ることはできませんからね」

・他社と比較して、オーロックス事業本部の特色は何ですか。

「近年のアニメ制作スタジオではデジタル作画が主流になり、手書きの作画環境が減少しています。一方、弊社では手書き作画の作業環境が整っており、デジタル作画と共存している点が特長です。デジタルとアナログの『良いとこどり』ができる環境だと言えるのではないでしょうか」

・手書き作画の環境を整えている理由は何ですか。

「手書き作業に精通したベテランアニメーターが多く所属しているからです。これは弊社の大きな強みであり、ブランディングにもつながっています。同業者から『あのアニメーターさんも所属されているんですね』と驚かれることも多いです」

・若手アニメーターにとっては、ベテランの技術を身近で体験できる環境ですね。

「まさにその通りです。近年のアニメ制作はデジタル化によって便利になった反面、机を並べて指導してもらう機会が減っているため、技術の継承が難しくなっています。またアニメーターは職人として、仕事に悩む機会もたくさんあるでしょう。そういった時にベテランの先輩が隣にいれば、的確なアドバイスを受けることができます。成長したい若手アニメーターにとっては、とても良い環境なのではないでしょうか」

千葉「弊社は特に教え好きの人が多いです(笑)大ベテランの方は逆に、若手からデジタル作画の技術を学んでいます。中には70歳を過ぎてデジタル作画を勉強しているアニメーターもいますよ。デジタルとアナログがシームレスに共存している点は、業界の中でも珍しいと言えるかもしれません」

「人を感動させる作品は、努力の向こう側にしかない」
アニメ業界が抱える課題と、
オーロックス事業本部の取り組みとは

・アニメ業界は労働環境が厳しいと言われることもあります。

大変な業界であることは間違いありません。でも、ラクをしながら人を感動させることができるのでしょうか。努力無しには良い作品を作ることはできません。ものづくりに対する真摯な想いがないと、この業界ではやっていけないと思います」

・クリエイティブを追求する姿勢が必要ということですね。

「そもそも本当にブラック産業だったら、なぜアニメ業界にこんなにも人が集まるのでしょうか?もしアニメに携わる人たちが『毎日辛くて何も良いことがない』という環境だったら、人の心を動かすアニメ作品は生まれていないと思います

ただ、現実問題として長時間労働が存在することは確かです。アニメ業界を志望する若い世代の方は、特に入社して数年の間はハードワークをしていただかないと難しいですね。厳しい話になってしまいすが……」

TOPICS

アニメ業界では依然として長時間労働の問題が存在します。
アニメ業界の構造的な問題に起因する部分も大きく、一社の努力では解決できる問題ではありません。
その中でもオーロックス事業本部では、長く安心して働ける環境づくりに取り組んでいます。


・出社時間の調整
前日の退社時間が遅かった場合は、その分出社時間を遅くできます。


・リモートワークの導入
地方在住のアニメーターを対象に、オンラインで作業可能なリモートワークを導入しています。
現在は経験者のみに導入していますが、未経験の方も事務所で1〜2年働いた後、リモートワークに移行することも可能です。
(※スキルにより応相談)

・一方、昔と比べて労働環境が改善された点はありますか。

「アニメに色を塗る工程や、撮影(音声などの素材を組み合わせる工程)はデジタル化により遥かに効率化されました。昔はセル画に直接色を塗っていたわけですからね」

千葉「原画と原画をつなぐ『動画』は海外のスタジオで仕上げることが多いのですが、コロナ以前は原画をプリントアウトして海外に発送していました。発送作業の期限に間に合わせる必要があるため、とにかく時間に追われていましたね。コロナ以降はオンライン化されたので、ずいぶんと業務が効率化されたと思います」

自由な発想を表現できるのがアニメの魅力
世界に向けて、若い世代と共に挑戦したい

・そのような大変さがある中で、アニメ業界で働く魅力とは何でしょうか?

「ひとつには『自分のクリエイティブが、人に伝わった』という実感を持てることです。特に昨今は、インターネットやSNSでリアルな反応がすぐに返ってきます」

千葉「批判の声も見えてしまうので一長一短ではありますが、昔は売上の数値でしかファンの反応がわからなかったので、良い変化だと捉えています。アニメ業界は自分のクリエイティビティを試す場として、非常にやりがいがある業界なのではないでしょうか」

「アニメは実写では難しい題材にもチャレンジしやすいので、とにかく企画の発想が自由ですよね。青春ドラマから時代劇、SFだって何でもアリです。近年は実写作品でもCGによって表現の幅が広がっていますが、その分大規模な予算、多くの時間が必要です。予算や時間の問題はアニメも同じなのですが(苦笑)作り手の想像力を最大限に発揮できる点は、アニメが持つ最大の魅力です」

千葉「ちょうど先日、サウジアラビアのアニメイベントに招待されたのですが、中東地域の日本アニメ人気を実感しました。日本の輸出産業として、もっと大きなポテンシャルがある分野だと思います。これからのアニメ産業を盛り上げるためにも、若い世代に頑張ってほしいと思います」

studio.株式会社では、アニメ制作現場の労働環境改善に取り組んでいます。
依然として課題は多いものの、より安心して働くことのできる環境を実現するため、
日々取り組みを続けて参ります。